中南米産地からの調達を担当しております、江藤です。すっかり気温もあがり、夏真っ盛りとなってまいりました。今週は、夏に向けた新商品「ニカラグアSHG シンマキアージュ」の開発経緯について、お伝え致します。

COFFEE NETWORKの商品群として、農園や農協ものといったスペシャルティ系の他に、ハイコマーシャルという位置づけのものがあり、例えばパプアニューギニアのTROPICAL MOUNTAINや、コロンビアのモンターニャシリーズが、それにあたります。農園や品種や精選方法を謳うのではなく、集荷地域の絞り込みや、クリーニング規格の工夫といったシゴトを加えることで、スペシャルティほど特殊なものではないけど、「この価格でこの品質なら十分使い勝手が良い」という立ち位置を目指した、コストパフォーマンス重視の商品群です。

今回ご紹介するニカラグアでは、そのラインナップの拡充が主目的ではありましたが、なぜニカラグアかと問われれば、いくつかの仮説がありました。

*コロンビアはある程度モンターニャシリーズで目鼻がついたので、次は中米であろう。
*基本コストが高く、コモディティよりの少ないパナマとコスタリカはまず除外。
*中米コモディティの雄と言えばグァテマラだが、現地通貨も高く、生産コストの上昇著しく、そもそも生産量の減少懸念があるので、グァテマラでの開発は将来性薄いだろう。
*残るはメキシコ、サルバドル、ニカラグア、ホンジュラス。この中で最も品質の安定性が高いのは、主要生産地が国の北側ほぼ1か所に集中的に固まっているニカラグアではないか。

という流れで、ニカラグアの探索が始まりました。さかのぼること2017年2月。人生初のニカラグアへと足を踏み入れました。あたりをつけた業者は4か所ほど。それぞれの集荷方法や独自の規格作りなどを学びながら、得意商品のラインナップをカップし続ける日々。

ニカラグアのコマーシャルコーヒーの最高等級のSHGは、コスト感でいうと、コロンビアのエクセルソUGQよりちょい安レベル。でもこのSHGにひと工夫ふた工夫入れていくと、どうも値段が思いのほか上がってしまいそうで、エクセルソと同じぐらいになってしまう。エクセルソと同じ値段でニカラグアを買う人がいるかな、という素朴な疑問にぶちあたり、探索は混迷していきます。

そして行き着いたのが、国の3割以上の量を扱う、ニカラグア最大手輸出業者である、CISA社。ここで発見したのは、「ちょっとのコスト高でそこそこいいものがつくれる」というものではなく、「結構安いのに意外といける」という、ハイコマーシャルならぬ、はぐれコマーシャル的な立ち位置の商品。

SHGを作る原料選定の段階でまずセカンド品としてはずされるロット群。ここからは当社の規格づくりのノウハウなのですべてはお伝えできませんが、そのロット群を活用し、〇〇を混ぜて、××は最低限外す、という思考錯誤を繰り返して、ひとつの到達点をつくりました。

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プロトタイプを作った後、日本に帰国し、少し時期をおいて、昨年16/17クロップで複数ロットをカップし、ロット間の品質の安定性を見ました。これはまずまずの好印象で、混入する欠点量の割にひどい欠点フレーバーがなく、意外といける、という感触。

ただこれで完成とはせず、今年17/18クロップに切り替わった際に再び複数ロットをカップし、クロップ間の安定性もチェック。これでとりあえず行けそうだという手ごたえを感じ、いざ、初輸入に踏み切りました。この1年に渡る複数回のカップで感じたのは、「素のままのニカラグアの味」というもの。セカンドグレードや欠点もすべてを内包し、普段は輸出用には率先して回らないものすべてを含めた、ニカラグアの底力のようなものを味わってしまう。化粧っ気のない完全すっぴんなニカラグアであることから、スペイン語でノーメイクを意味する、

「シン・マキアージュ」

と名付けました。
雰囲気的には、数年前に扱っていた、ウガンダのナチュラルアラビカのようなイメージです。

その初貨物がまさに昨日6月27日に入庫となり、横浜港でのその作業に立ち会ってまいりました。さてさて、約4週間強の航海を経てたどり着いた貨物の状態はどうだろうと、期待に胸をふくらませます。麻袋にはきちんと「SIN MAQUILLAGE」の記載があり、自分たちが新規に開発した商品への何とも言えぬ愛着感がこみあげます。そしていざ袋をあけてみると、豆の外観チェックをすると、「あれ、思ったよりも、豆面が白い・・・というか、欠点これ多すぎでは・・・」と、一抹の不安が急速に訪れます。

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「やばい・・・まずい商品を輸入してしまったかも・・・」という恐怖にかられながら、早くその実情を確認したくて、入庫したての生豆をがさっとひっつかみ、弊社の輸入貨物を一手に保管してくれている富士倉庫さんのオフィスへいざ直行。彼らが品質確認のために使っている簡易焙煎機を使い、カップチェック。(それにしても、まるで電子レンジみたいな、妙な焙煎機です)

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チーンと出てきた豆は、思いのほか煎りが長く入ってしまい、ほぼイタリアンロースト状態。まあでも、夥しい量の欠点豆を隠すには、これぐらいの煎りが良いだろうと一人納得。スッピンなのかガングロなのか、もはや焦りでこの豆のアイデンティティが分からなくなりながら、いざカップ。

「むむ!悪くない!」。

そうそう、これだけひどそうに見えて結構いけるのがこの豆のよいところだったのだと、その真価を自分の中で再確認出来たことに大きく安堵し、先ほどからは少し時間を短めに設定し、二度、三度とカップ。深煎りならぬ、中煎り程度でもひどい欠点臭はなく、いやな枯れ感もなく、これまでの自分のロットチェックの旅路が悪くなかったことを実感。

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ここで改めてお伝えしたいのは、新商品「シン・マキアージュ」は、決してものすごくよい商品ではないということです。これは、コモディティ商品を広く見たことも試したこともなく、ただ農園名がある、ただスコアが何点である、というだけで闇雲に「スペシャルティコーヒーが良い」と思い込みがちな現在のコーヒー業界に新たな一石を投じる、兼松なりのチャレンジ商品です。

その国のコーヒー生産量のほんのわずかな上澄みでしかない、最上級なロットだけを追い求めてその国を語るのではなく、飾り気のないすっぴん商品にその国のコーヒーの品質の神髄を見出し、そういうボトムなものを拾い上げることで、その国のコーヒー産業を少しでも支えられたらという、兼松なりの新たなサステイナブルの観点に基づく、新規商品です。この商品が少しでも多くの方にみてもらえ、こんな価格のコーヒーでも十分に使えるものがあると感じていただければ、非常にうれしく思います。

ニカラグア SHG シン・マキアージュ

今後ともCOFFEE NETWORKをご愛顧くださいますよう、お願い致します。

(兼松・江藤)