FRESH CUP MAGAZINE 2011年8月号掲載記事より
最近注目を集める、新しい焙煎スタイル「スカンジナビア・スタイル」をご紹介します。

ロースターは長きに渡り、自分達の焙煎方法を会社の看板としてきた。
生鮮食品売り場でコーヒー豆を購入する際「フレンチローストコーヒー」や「イタリア北部のエスプレッソ」といったラベルのコーヒーを見かけるであろう。

最近話題となっている焙煎スタイルは「スカンジナビア・スタイル」である。
この言葉はUSAのThird waveのローストカルチャーの間で広がり、彼らのWEBサイトのディスクリプタ(情報検索において使用する名前や種類名)として使用されている。このスタイルは少数派ではなく、多数派となっている。第六回WBCで使用された多くの豆は、このスタイルで焙煎され、非常に注目が集まっていた。

スカンジナビア・スタイルは、香り、特に甘みをはっきりと出すことが可能である。そのためバリスタ競技者にとって、簡単にある程度まで自分の目指すコーヒーを作りだすことが可能である。更にコーヒーに何かもの足りなさを感じたとき、これが一つのアクセントとなり、より良くすることが可能である。

一般的なスカンジナビア・スタイルはシンプルな焙煎方法である。
・コーヒー生豆は、高品質で型にはまらない独創的なフレーバーを持った豆を使用する。
・焙煎の特徴はユニークさと甘さ、香のバランスである。
・焙煎の最終過程の色と温度は、多くのUSAのロースターの伝統的な焙煎基準からすると、色は薄く、温度も低い。

この焙煎スタイルの最終目標は、潜在的な特徴を最大限まで引き出されたコーヒーのテロワールを目立たせることである。そのため、使用豆は欠点が隠されていない世界最高級のアイテムが使用される。
この焙煎スタイルの代表的なカップ評価としては、柔らかな酸味、body、甘みではないだろうか。
エスプレッソだけでなくドリップコーヒーとして飲んでも、最高の甘みを持ち、産地や精選工程の素晴らしさを味わうことが出来る。

<基本>
スカンジナビアン・スタイルを成功させる為には、焙煎の初期段階でマシーンを高温にしなければならない。(コーヒーの硬度や焙煎マシーンにもよるが、一般的に豆と機械が接する部分の210~260℃にしなくてはならない。)
焙煎を始めた直後は急激に変化し、その後コーヒー豆がグリーンからイエローに変化した時点で、豆の熱吸収がゆっくりとなり、変化は弱まっていく。
(コーヒー豆がグリーンからイエローに変化するのは、焙煎開始からおおよそ4~5分くらいである。)

いちはぜ後、豆が最高の状態に落ち着くように火を35秒から1分間の間で徐々に弱めていく。
(いちはぜ前とは対象的に、コーヒー豆は熱を放出し始める。)

その後の温度を一定にした後は、豆は一分間に2~3℃ずつゆっくりと温度を上昇させていく。
"いちはぜ"から焙煎終了まで3分しかない。事実多くのスカンジナビアン・スタイル実践者はこの時間の限界を2分30秒と考えている。最終段階での焙煎は、200~210度と低い温度となっている。
焙煎時間はコーヒーの特徴や硬度にもよるが、一般的には10~15分くらいとなっている。

<科学>
焙煎初期段階での高温は、多くのUSAのロースターを躊躇させるであろう。
焙煎機を始めに高温にすることを提唱した一人であるBeccor CoffeeのJoel Pollock氏は、この方法で焙煎した場合、焦げやティップ(焦げ後が残ること)への懸念が出てくるのが普通だと述べている。
彼の答えは、「焙煎開始段階でのコーヒー豆は硬い組織を持っており、熱を多く吸収することが出来る。中盤、終盤段階になると熱を加えられたことによって組織構造が変化し、もろくなり、ダメージを与えることが出来るようになる」と言っている。

簡単に言うと、コーヒーの組織は我々が思っている以上に強固であるということである。焙煎の初期段階や豆への熱エネルギーが不十分な場合、豆に対して変化を加えることが出来ない。しかし、豆が高温になったいちはぜ後、初めて豆の構造を壊すことが出来るということである。

焙煎では、カラー、アロマ、フレーバーの三つに変化を与えることが出来る。
・"メイラード反応"と言われる豆が茶色に変化することは、熱を加えられたことにより、アミノ酸と糖の減少によって起こる。
・ 実際に糖のキャラメル化が豆の中で起きている。
・ ストレッカー分解は二つの炭素分子グループ(酸素原子の二重結合炭素原子)からなる非糖とアミノ酸が反応して起こる。

これら化学反応を正確に説明するのは難しいが、結果は明白である。コーヒーの香が最高頂に到達するのは、十分に焙煎され、糖が完全にキャラメル化したときである。

多くのコーヒー専門家が、純粋なショ糖とキャラメル化したショ糖では、驚くほどの味の違いがあると言っている。純粋なショ糖は、キャラメル化したショ糖よりも非常に甘みが強い。キャラメル化が起こると、糖はぼやけてしまう。しかし、アロマに関しては、純粋なショ糖では甘いアロマは作り出すことは出来ない。純粋な甘みを作り出す方法は、ショ糖のキャラメル化を最小限に抑えることである。しかし、適切な温度、適切な焙煎時間で行なわないと逆に苦味成分を作りだしてしまう。別の言い方をすれば、「深い焙煎はコーヒーの糖をキャラメル化させるが、コーヒーの甘みも少なくする」ということである。
いちはぜでメイラード反応とストレッカー分解が、完璧な状態で行なわれていることが一番大事なことである。この状況が成功すれば、純粋なショ糖を作り出すことに成功することだけでなく、優れたアロマも作り出すことが可能である。この理想的な状態を作り出すために、190~210℃という温度を長時間保つことが重要である。

<苦味>
言うまでもないが、コーヒーにとってキャラメル化によって作られた苦味は、バランスをとるために必要である。
中煎りから深入りで、トリゴネインという化学物質で知られている苦味成分が、温度が上がるに連れてバランスが崩れ、生成される。この化学物質は焙煎を深くすると分解され、コーヒーの照りも同様の反応で生成される。この反応は190℃くらいから始まる。甘みが強いスカンジナビアン・スタイルが作り出すバランスに到達するには、焙煎開始の初期段階にリンゴ酸、酢酸、クエン酸の値が高くならなければならない(中煎り焙煎では酸を多く出すようになる。)この化学物質は豆に光沢と輝きを与えると同時に、複雑で変化に富んだアロマや苦味成分であるトリゴネリンも増やす。もちろん強い苦味がでる可能性も十分にありえる。トリゴネリン分解は必要な反応である。この反応はいちはぜの発熱反応中温度を保っていることによって出来る。これがこつであり、このスタイルには欠かせないものである。

<ヒントとコツ>
焙煎はいちはぜが終わるまで、温度を下げては絶対ならない。もし下げてしまったら、焙煎は失敗に終わり、コーヒーの魅力は消えてしまう。
更に、望みの焙煎コーヒーを作り出すために、ロースターの収容能力に注意し、高温を保つことと、豆の急な変化に注意しなければならない。さもないとコーヒーは更にもろくなり、豆のなかから粘着物が現れ、焦げが発生するであろう。
火を調節する際は、焦げや焙煎ムラを避ける為に豆全体が深い黄色になった時点で行う。いちはぜ後、ロースターの熱源を止めることで、焙煎の勢いを止めることが可能である。いちはぜが多く起きたときに通常の温度に変更し、その後温度を下げることにより、焙煎をコントロールする。

このスカンジナビアン焙煎方法を試してみてください。だだ、もっとも重要なのは味です。