今月の頭にアメリカの西海岸にあるロングビーチと言うところへ出張して参りました。
目的はSCAAカッピングジャッジの資格取得です。
この資格は、ご存知の方も多いとは思いますが、欠点チェックの意味合いの強いブラジルのコーヒー鑑定士に対し、どちらかと言うと長所探しのソムリエ的な資格と捉えられます。

今回はある程度、カップの経験を積んでいる事を前提に進められました。
授業よりもテストに費やす時間の方が多く、まさにコーヒー漬けの出張となりました。

具体的にどういったテストをやるかを、下記にて紹介したいと思います。

■グリーングレーディング
ブラジル方式や東京穀物取引所などと多少異なり、独自の選別方式を確立している。
守るべきルールは以下の通り。

* 生豆は350グラム、ロースト豆は100グラムにて行う。
* コーヒー以外の匂いがない、かつ生豆の色がSCAAの定めた色と比較し、適正である事。
* 水洗式生豆の水分値は10-12%、非水洗方式は10-13%のものを対象とする。
* サイズは各契約によるが指定スクリーンが全体の95%以上である必要がある。
* Specialty GradeはカテゴリーⅠ(重大)の欠点混入無し、カテゴリーⅡ(軽微)は5点以内。
* Premium GradeはカテゴリーⅠ、Ⅱ合わせて8点以内。
* それより欠点数多いものはBelow Premium Grade。
* 複数の欠点が重なっている豆は、重い方の欠点をカウントする。
* ロースト豆はクエーカー豆(未熟豆)のみのカウントでSpecialty Gradeはゼロ、 Premium Gradeは3個以内。

とにかく時間が無く、スピードを求められるテストです。
テストはあらかじめ丁寧に欠点を取り除かれたサンプルに一定の欠点豆が加えられ、それを判別する方法がとられます。

■センサリースキルズ(基本味覚チェック)
塩味、甘味、酸味といった基本的味覚の有無を判断するものであり、コーヒーは全く使用しない。

【テスト1】
各3種類(甘み、塩味、酸味)の溶液に関して、それぞれ強度が3段階に分かれており、それを味の種類の情報は与えられた状態で、強度ごとに並べ替える。

【テスト2】
テスト1の9種類の溶液に関して味、強度それぞれを特定する。

【テスト3】
テスト1,2で使用した溶液を、2種類、もしくは3種類混ぜ合わせ、その味と強度を特定する。
このテストを最初から高得点でパスする人はまれと思われます。かつて1300人近くテストを受け、そのうち半分はこの科目で落としているとの事。ただし日本人は全員合格しています。やはり日本人の舌は発達しているのかなあ、と誇らしく思いました。


■カッピング
客観的な指標により、偏りのないカッピング結果を残せるようになる能力を養う。
基本的に守るべきルールは以下の通り。

* グラインド(Metalの目盛りにて行う)からブレイクまでは同じ人間が行う。
* アロマの評価時まではグループ内で意思疎通はかる。(欠点の有無の確認のみ)
* アロマ評価以降はカッパー同士で会話をしない。(公正な採点のため)
* 湯を注ぎ3分後にブレイク(浮いた粉の部分のみ)
* 各項目に関して、7.25以上をスペシャルティコーヒーの基準の目安とする。
* 逆に6点台はコマーシャルコーヒーのレンジ。
* 産地の特徴が強く出ているものは、総合で85点以上となるのが目安。
* 一回のカップは適度な数量(8種類/回程度)に留める。

また使用するSCAA Cupping Formの内容は以下の通り。

1. Fragrance
粉の状態で香りの質を判断する。同じく下の"Dry"の部分に強弱のみ記入。
Aroma お湯を注ぎ、ブレイクした後の香りの質判断。 下の"Break"には強弱のみ記入。

2. Flavor
最初に口に含んだ時の全体的な味覚の印象。 産地らしさある場合はここに記入。

3. After Taste
液体を吐き出した後に長く続く心地よさを評価。

4. Acidity
酸味の質の部分のみを評価。下の"Intensity"には強弱のみ記入。

5. Body
ボディの質を記入。After Tasteと関連する。 "Level"の部分には強弱のみ記入。

6. Uniformity
5カップの均一性を、1カップ0点or 2点で評価。仮に全部から欠点出ていたとしたら満点となる。

7. Balance
酸味、ボディ等、全体のバランスが高い状態で保てているかどうかを1カップ0点or 2点で評価。

8. Clean Cup
欠点が出ていないかどうかを1カップ0点or 2点で評価。

9. Sweetness
甘みがあるかどうか(1リットルの水に5グラムの砂糖を溶かした程度)

10. Overall
主観的に総合評価として判断・記入。

11. Defect
欠点が出た場合記入。Taintは軽度で1個2点減点、Faultは重度のもので、1個4点減点。
またUniformity, Clean Cup, Sweetnessについても、1カップ毎に2点減点する。1つでも上記に該当するカップがあれば、総合点はかなり低くなる。同テストの性格上、欠点は見落とさない事が必須。

熟練したカッパーになると、2,3口飲んだだけで、上記項目の全ての点数を瞬時に決められるようになるらしいです。私は項目を覚えるだけで精一杯でしたが。

■トライアンギュレーション(異なる産地のカップによる判別)
3カップのうち、1カップ異なる産地のコーヒーがあり、それを識別する。
基本的にはアロマで識別、カップで確認する手順が一番わかりやすい。
副次的ではあるが、粉の色、抽出液の濃さ、粉の沈殿具合なども、判断材料とすると答えを確認しやすい。
カップでは酸や甘さなど、判断基準を1つに絞る方が分かりやすい。
今回は同じオリジンで違う農園、という出題もあり、非常に難易度を高く設定していた。
中米系はさめたあとに酸味の違いが、ブラジル等は香りの違いが出やすい。
試験は視覚による判断を制限するため、赤色等のもと行われる。

■オルファクトリー(36種類の香り識別)
コーヒーに含まれる香味成分の構成要素は850種類程度で、食品最大数と言われており、全ての解析は未だ終わっていない。
その中で代表的な下記36種類の香りを抽出(SCAA指定、FNC作成のエッセンスを使用)、それぞれを記憶・特定するテスト。

なお余談ですが、タバコには5,000種類にも及ぶフレーバーが含まれており、それを全てかぎ分ける人がいるらしいです。

香りは大別して下記4つに分けられる。それぞれローストの段階が進むにつれ、いくつかのフェーズを辿る。
カテゴリーの類は以下の通り。

"Enzymatic"
植物として生きていた頃に、酵素の副産物として生成。

"Sugar Browning"
一はぜが終わった頃に生成。

"Dry Distillation"
Sugar Browningの次の段階。

"Taint"
全てDefectの観点で捉えられている。

たまにみた事も無い食べ物の香りがあり、(例えばバスマティ・ライス。皆さんご存知でしたか?)覚えるのに一苦労です。

■オルファクトリー(36種類の香り識別)
1組につき4カップ用意され、そのうち2カップに加えられた酸を識別する。
酸の種類は下記4種類あり、テストでは計8組(32カップ)において識別する。
4種類の酸は、2組ずつあり、強度の特定も必要。試験は赤色等のもと行われる。

<酢酸(Acetic)>
ロースト段階、もしくは発酵過程で、生豆の炭水化物が分解される事により生成。
酢や発酵に近い味がするが、強度はそれほど強くはない。
溶液は濁っている。

<クエン酸(Citric)>
焙煎が浅い段階で現れ、度合いが進むにつれ急激に減少する。
レモン、ライム、オレンジ等に近い酸を感じる。
溶液はかなり濁っている。

<キナ酸(Quinic)>
焙煎により熱を加える事でクロロゲン酸が分解される事で生成。
フレンチロースト時に最も多く見られる。
麻袋臭、もしくはスマトラ臭がする。重い酸として捉えられる。

<リン酸(Phosphoric)>
生豆がまだ木になっている段階で、地中のリン酸を吸い上げる事で生成。
後味に明るさや甘みを与える。コーラ等、炭酸飲料に入っている。
ケニヤを始め、東アフリカのコーヒーに多くみられる。

等など。非常に科学的に「カップ」というものに取り組もうとしている姿勢がうかがい知れる基準のもと、テストは行われました。
今回、無事合格する事が出来ましたが、資格自体よりも、むしろこの期間中に学んだ事を生かし、より良いコーヒーの発掘に役立てていきたいと考えています。

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