米国の雑誌"Roaster"にサステイナブル・コーヒーに関する興味深い記事が掲載されていました。翻訳したものを掲載します。
:: Roast Manazine" Nov/Dec2004 issue

何らかの公的機関からの認証を持っているコーヒーが全世界において占める割合はごくわずかでしかない。SCAAの試算によると全体の10%に満たない。しかしここ最近の流れを見ると、認証コーヒーへの世間の関心は急速に高まっている。ある専門家によればトレンドは加速しており、実際のコーヒー購入量のなかにそれら認証コーヒーが占める割合は15%にも達しているという。

消費者達は、コーヒーという作物がもつ社会的・環境的影響力に次第に気が付き始め、認証ラベルが示す環境、動植物、人間に対して優しい観点等を盛んに騒ぎ立てている。農家達は、このラベルによって低迷するコーヒー相場から脱却できると希望を持ち始めている。ロースターは、複数の感情がないまぜになった感覚に苛まれている。つまり、ラベルを評価し自らの商品を差別化する一助としたい一方で、ある認証ラベルに対しては自らの信条に合わずまたコストアップの不安があるために批判的な立場をとる・・・。それ以外の大多数の市場参加者は、ただ数多く存在する認証システムに困惑しているだけである。

個々の信条がどうであれ、認証システムについて研究することは価値のあることである。一部のロースターからは、自社認証ラベル付き製品の(ニッチ市場ではなく)メイン市場における成功が報告されている。また、缶入りのレギュラーコーヒー製品を製造する大手メーカーでさえも認証コーヒーをラインナップの一部に組み入れている。"Natural Marketing Institute (自然商品マーケティング研究所)"の報告によれば、米国の成人の内1/3がオルタナティブ商品(既存の商品とは異なる高い付加価値を有する、代替可能な商品)の購入をこれまでに経験済みという。これはつまり低価格とは無縁の存在であるこの様なオルタナティブ商品に対する関心の高さを示しているともいえる。こうした人達は、オルタナティブ商品にそれと見分けるための第三者機関による監査を要求する。つまりそうした確証があって始めて認証ラベルはその正当性を確保できるからである。

■個別のゴール、共通の帰結
ロースターや生産者にとって、認証ラベルはメリットと共に成約やコスト増も示唆するものである。確かにそれぞれの認証システムは、農協組織や渡り鳥保護など独自の観点を持ってはいるが、その歴史やガイドラインの根幹などにおいてはほぼ全て共通であるといえる。

認証システムは1960年にスタートし、その拡大の契機を得た。当時世界的な人口増を背景にコーヒー生産は伸びた。価格は比較的安定的で、生産者が投資に還元するに足る収入を得ており、またそれが故に、政府もコーヒーの新規作付けを奨励していた。一方先進国においては、環境問題や第三諸国の経済状態に関心が向けられていた。おりしも当時科学者達が地球資源の枯渇について警鐘を鳴らし始めていた。

こうした潮流の中で、コーヒー業界はスペシャルティ・コーヒーを携えて市場を活性化させ、生産者と消費者とを結びつけるトピックを多く生み出した。この初期段階では、認証ラベルはスペシャルティ・コーヒーにとって中身が保障されている物であることを示しコモディティと差別化しつつ市場を開拓するものでしかなかった。1996年カリフォルニア州・バークレーにおいてあるロースターが中米産コーヒーを「コナ・コーヒー」として販売した醜聞をきっかけに、このトレンドはブームへと変わった。

ある認証システムは環境的側面に着目し、またあるシステムは労働者の福祉、価格保証について、またある認証はオーガニックについてのみ着眼点を置いている。ただ、全ての認証システムにおいて、規制の強弱の違いこそあれ、下記の3点が基本的な農家保護手法であるとしている点は共通している。

作付け・改善・実践によってより良い営農管理を奨励し、結果として良い製品が出来る
特に全世界のコーヒー生産の75%を占めると言われている小規模農家を対象に、バイヤーを探すヘルプを行い、時に融資する。仲介業者を取り除くことができれば収入が二倍になるケース、等。
バイヤーとの長期的・継続的関係を構築することに主眼を置き、故に品質の安定・改善のためのフィードバックを得ることが出来る
こうした全ての要素が、ひるがえってロースターにとっても重要な課題であるサプライ・チェーン内での長期的・継続的な(サステイナブルな)関係構築を促している。

■議論のネタ
すべての認証システムは意義のある理念の元に設立されているが、一方で様々な議論を引き起こしてもいる。

最も大きな批判は、どの認証システムもコーヒーの品質を第一義としていない、ということである。全ての認証システムが品質以外の点に設定されたゴールを追求しており、コーヒーの品質は結果として向上するかも知れないが、逆の効果をもたらすかも知れない。多くの議論において、認証はコーヒーの品質とは別の問題として語られている。

こうした誹りを免れるべく、レインフォレスト・アライアンス(以下RA)は、生豆をcuppingした結果を農家へフィードバックするシステムを確立するべく検討中である。また、マーケットこそがものの良し悪しを判定する最終的な権威であると信じる向きには、オーガニック認証商品やFair Trade認証商品が今年のオークションでトップを取っている点を挙げよう。ニカラグアのオーガニックは、ポンドあたり$12.50を記録、またパナマのRA認証生豆は実にポンドあたり$25.00という高値を付けた。

また、無数の認証システムがコーヒーのうるさ方にとってでさえ難解なものであるという批判もある。それぞれの認証ラベルコーヒーの支持者達は、自らが支援する団体こそが他と比べて環境保護・労働者保護の面から秀でている、または市場原理に正しく則したものである、と議論を戦わせている。また数多の認証団体や、企業単体や協同購買グループなどがそれぞれの産地に対する掘り下げをひけらかしている現状では、ロースターがあきらめの境地に入ってしまっても無理からぬこと、といえる。

「認証ラベルは、そもそも消費者が手にした商品がいったい何なのかを理解しやすいように作られたはず。10アイテム手にしたら、それら全てが基本的には同じことを言っている。これでは意味がない。」と希少で品質の高いスペシャルティ・コーヒーをオークションにかけるプログラムで知られているCup of Excellenceのディレクター、スージー・スピンドラー氏は言う。「つばぜり合いをしている内に、大きな目標を見失ってしまった。」

そんな中、多く存在する認証を一つの第三者査察者により一括管理しようと言う流れがあり、これは良いニュースである。今後を見守りたい。

一方、農家にしてみれば認証にかけるコストが利益を浸食しかねない。あるバイヤーはQAI認証のオーガニックを欲しがり、別の顧客はNaturand、またさらに別の顧客からはJAS有機、といった具合に。ブラジルの巨大な農園・ダテーラでは実に年間$25,000もの費用を6つの認証コストにかけている。しかしながらある認証機関は、トータルの認証生豆の中でごく一部のみを、その認証ラベルを使って販売して良いという制約を設けている機関もある。これはつまり、品質や商売当事者間の問題であるのみならず、農家として必ずしも常に投資が回収できるとは限らないということを示唆している。

ある認証機関は、認証を与える農家の数を限定することで(もちろんこのスタンスを公にはしないで)この問題を回避しようとした。しかし、排他的な活動は問題発生に即繋がる。メキシコで有名なIsmam農協を指導したジョージ・アグイラー氏によれば、狭い農家社会や共同体の中で、認証される所とそうでないところが出来、これにより村八分のような状態が容易に引き起こされる、という。ある認証機関が農家を排除したり、膨大な認証コストをふっかけたりすると、不公平な階級差別であると見なされる。認証システムとは、先進国の価値観を発展途上のコーヒー生産国に押しつけるものであるとの批判もある。

また、認証ラベルのマーケティング・ツールとしての有用性が、逆にその信頼性を脅かすことにもなりかねない。例えばある企業がごく少量の認証生豆を購入し、それによりあたかもその企業が大きく社会に貢献しているという誇張表現をしてもそれを止められないと言う危険性もはらんでいる。

■将来への投資
認証システムは、ともすると当事者にとっては重要なこと、例えば認証機関への関心、農家の利益、ロースターにとってのマーケッタビリティ等の他に、もっと大きなものを我々に提示してくれているのかも知れない。

多くのロースターが今や一つ以上の認証を担いでおり、またそれぞれのラベルの信条など特に理解せずともその有用性を見いだしている。つまり彼らロースターは、農家の生産スキル・生活の向上、農家とバイヤーとの直接的なコミュニケーションそして永続的な関係の構築など、認証システムの中心テーマに、接触しているのである。

カリフォルニア・サンラファエルの高級ロースター、Equator Estate Coffees & Teaのモウリーン・マクハウ氏はこう言う。「ある種の危機感を憶えます。産地でめまぐるしく変わっていることに取り残される前に、ついていかなければならないのですから。」

シアトル拠点のJava Trading Co.,の購買責任者、ビル・モーワイス氏によれば、認証コーヒーを長期にわたって買い付けることのメリットは、いますぐに結論付けられるものではないという。将来、必ずやってくるであろう一般コーヒーの価格が再び上昇期を迎えたときに、逆に会社が生き残れるようにサポートしてくれるはずだと期待する。「多くの認証システムはサステイナビリティを促進する様準備されている。我々ロースターは、生産者がよい品質のコーヒーを将来にわたり生産してくれる、という保証を必要としている。ロースターは、現在起こっている状況をしっかりと直視し、自らが生産者から永続的にコーヒーを供給してもらえるような関係を築き上げているか考えなければならない。」

「サステイナビリティを追求する動きが企業哲学から発生するものであり、また一つ一つの購買がより大きな企業理念に裏付けされたものでなければ、認証ラベルは農家が現在直面する危機を乗り越える有効な手段とはならない。」カリフォルニアのDean's Beans Organic Coffee Co.のディーン・サイコン氏は言う。「認証コーヒーを買うと言うことは、これまでの一般商品を通常の手法で買い付ける機械的なコミュニケーションから、より人間対人間のコミュニケーションに切り替えるという情熱的な使命、つまりスペシャルティ・コーヒーを他の一般商品群とは違う高みに持っていく作業なんだ。私は自らの理念が正しいと信じているし、もし認証ラベルが我々の行いを証明する手段だとしたら、素晴らしいことじゃないか。認証が農家のニーズ、我々のニーズの双方を映す鏡だとしたら、膨大な量のコミットメントを含んでいることになる。」

:: Certificatons at a Glance(PDF:177KB)

:: 筆者紹介 Ms. Trina Kleist
サン・ディエゴ在住ライター。17年間、ラテンアメリカをはじめとしたコーヒー生産国を旅しレポートし続けている。この1年間は特にスペシャルティ・コーヒーに関する取材が中心となっている。