■自然現象としてのエルニーニョ
エルニーニョとは太平洋の中南米付近の海水気温が上昇し、気候の変化をもたらす事をいう。以下通常時とエルニーニョ発生時の対比を記す。

<通常時>
1. 赤道付近を貿易風(東風)が吹いている。
2. 貿易風によって、東(ペルー近海)の温かい海水が、西(インドネシア近海)へと運ばれる。
 (海水は通常温かい水が上に、冷たい水が下に来る。また、風は海表面の海水を移動させる一因である。)
3. 暖かい海水が西へ流れた分、ペルー近海ではそれを補うように、冷たい海水が上昇(勇昇)する。
4. インドネシア近海では温かい海水が集められるため蒸発量も多く、積乱雲が発生しやすい。よって降雨量が多い状態となる。

<エルニーニョ発生時>
1. 何らかの原因により(原因不明・諸説あり)、赤道付近の貿易風(東風)が弱まる。
2. 貿易風によって東から西へ運ばれていた暖かい海水が、貿易風の弱まりによって東に留まる。
3. 温かい海水がペルー近海に留まるため、冷たい海水の上昇(勇昇)が起こらない。気温は海水の水温にも左右されるため、暖かい海水温が通常より多く留まることで、気温も上昇する。(降雨量も多くなり、雨量過多・洪水の原因となる。)
4. 暖かい海水が集まる位置が、通常時のインドネシア近海よりも東にずれるため、その分、積乱雲の発生も東にずれ、結果としてインドネシア近海の降水量は減少する。(干ばつの原因となる。)

■エルニーニョの、ブラジルクロップへの影響
ブラジルにおける、エルニーニョのもたらす気象変化の傾向は、北部と南部に分けられる。南部は比較的多雨であるが、収穫時に降雨があると、不良品が増加する恐れがある。一方北部のコーヒー収穫量はそれほど多くないものの、高温・少雨で干ばつとなる傾向が見られ、影響が多少なりとも出る。そして何よりもコーヒーは特に乾燥に弱いため、エルニーニョが発生し、干ばつが起こった年は理論上不作となる。

次にエルニーニョ発生時のブラジルのクロップ量を示すと、

1. 91/4月~92/7月...24百万袋
2. 93/4月~93/7月...29百万袋
3. 97/4月~98/7月...36百万袋
4. 02/4月~03/2月...54百万袋(参考資料:アメリカ農務省)

となっており、いずれも現象発生前後の年と比較して増産傾向にある。つまり理論通りには不作となっていない。実際3のエルニーニョ発生時、アマゾン・ノルデスエリア(赤道付近)においては大規模な干ばつが見られた。具体的にはアマゾンの"Black River"においては8.6mの水位低下が確認されているものの、コーヒーの産地への直接的影響は軽微であった模様。
結論として「エルニーニョ発生=ブラジルのコーヒー不作」という図式が単純に成り立つわけではないという事が言えるだろう。エルニーニョの影響は少なからず全世界の気象に関係し、伝播するものである。よって単純にブラジルという一国レベルで考えられるものではないからである。あくまでエルニーニョが発生すると、コーヒーが不作になる「傾向がある」としか言えないだろう。結果的に不作となった年でも、裏作該当年である等、他の要因も考えられる。