今回は、以前にポートランドのカフェ&ロースター事情でもご紹介した「Mt.Hood Coffee Roasters」を特集します。

ポートランドは、シアトルの影に隠れがちですが、独自のコーヒー文化を醸成し、発信し続けるコーヒーの街です。
101-photo01.jpg スペシャルティ・コーヒーの第一波(コモディティを脱却したという意味で「2nd WAVE」と呼ばれる。言ってみればシアトルの別表現)に疑問を呈し、生豆の出自や流通方法、コーヒーの淹れ方、店のインテリアに至るまで、より深堀 し、規模を追わずに地元に密着。芸術のごとくディティールにこだわり過ぎるあまり、ともすれば独りよがりになること請け合い、でも当人はまったく気にしない、という次なる波「3rd WAVE」の発信地です。

そのヘンテコぶり(WEIRD)を街全体で支持し、むしろアクセルを踏んでしまう、ポートランドはそんな街です。市長が自分がゲイであることを当たり前のように公表するあたり、このWEIRDを地で行っている街と言えるでしょう。

ヘンテコな人が比較的多く住むSE地域(川を挟んでダウンタウンの反対側)には、多くのコーヒー店が立ち並び、その先頭を走るのが、コーヒー業界では今やビッグネームとなったStomptown Coffee Roasters。これは以前特集しましたね。
前振りが長くなりましたが、今回特集するのは、その「Keep WEIRD」を地で行くコーヒーロースターのひとつ「Mt.Hood Coffee Roasters」。

その名の通りポートランドの背後に構えるスキーのメッカ、名山・Mt.Hoodの麓、国有林内に、ひっそりとたたずみ(ほったて小屋とも言う)、オーナーRick Applegate氏と、
奥様、バイト数名で営む正に家庭内工業の焙煎業者。
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私がこのApplegate一家と知り合ったのは、我が家が冬場に根城としているMt.Hood山麓の町Govermment Campにあるドミトリーでのこと。子供同士が仲良くなったので、その流れで親同士も話が弾みました。

このApplegateという名前、実はオレゴン州ではとても有名なラスト・ネーム。
1800年代半ば、東海岸から西部開拓団としてオレゴンへ到達、開拓を進めたパイオニアの一人がLindsay Applegateを始めとするApplegate一家であり、今でもオレゴンの至る所にApplegateの名を冠した地名が数多く残されています。Rickは、このApplegate家の末裔の一人なのです。

101-photo03.jpg その歴史的ストーリー性だけでも十分な価値がありますが、規模を追わない地域密着性(ホントにこじんまりした店なんです)、こだわりの焙煎方法(オレゴン在住の焙煎機職人の手によるハンドクラフトの旧式焙煎機、最近ではどこも使用していないほど)、生豆のオリジン(こじつけに近いこだわり)、そして何よりRickと韓国人の奥様の気さくな人柄も加わって顧客を惹きつけます。

熱烈なファンは、わざわざシアトルから車を走らせて豆を買いに来るとか。まあ、真偽はともかくとしても、この店で淹れたてのコーヒーを片手に、静かでゆったりとした時間の中でRickと談笑するのは確かに心地よく、スキーの帰りにはつい立ち寄ってしまうのです。