アメリカはオレゴン州・ポートランドで、地元のカフェ、ロースターをめぐってまいりました!
今回のSCAAの開催地でもあり、アメリカの中でもスペシャルティコーヒー文化が根付いているポートランドの最新カフェ&ロースター事情をご紹介します。

【Portland Roasting Company
http://portlandroasting.com/
097-photo01.jpg 1996年創業、従業員約30名、ショップを持たず業務用卸・小売販売が中心。
生豆の取扱量は80~100万ポンド/年間(400~450トン)。
アメリカでは、100万ポンドという数字が中規模ロースターのひとつの基準となるとの話。

焙煎釜はトルコ製Toper、120kg釜。
最初の導入時に比較的安価で調達できたということで、この珍しいトルコ製の機械を使用しているそう。メンテナンスには多少の難があるとか。

Roast Magazineによる、2012Macro Roaster of the yearを受賞。ポートランドでもスペシャルティコーヒーを取り扱うパイオニア的存在ですが、単にコーヒーを扱うのみならず、産地のアフリカへの寄付を募るためのイベントをポートランド市内で実施したり、社会貢献を目的としたコミュニティー活動を行うことで、スペシャルティを扱う意味を消費者に伝え広めて成功しているロースターと言えます。

また、アメリカ国内最大の、Monin社のフレーバーシロップの卸売業も営んでいます。

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【Bridgetown Coffee
http://www.bridgetowncoffee.com/

1991年にMr. Don Jensenが夫婦で設立。
業務卸を中心にスペシャルティコーヒーを扱い、工場は全米に4ヵ所(オレゴン州ポートランド、ニューメキシコ州アルバカーキ、フロリダ州ペンサコーラ、ネブラスカ州グランドアイランド)。各地域に根付いた商品販売をしています。

ポートランド工場で100万ポンド/年間、4工場トータルで200万ポンド(900トン強)の生豆を取り扱うそう。
企業規模としてはかなり大きいです。

焙煎方法はドラムトースター。その理由としては、
①プロセスがシンプルである、②チャフ等の廃棄が少なく地域環境に優しい、③焙煎中の豆のチップ(欠け・割れ)が少なく、こげ味の影響がでにくいとの持論。

Don氏は学生への教育にも力を入れており、バリスタ、ロースター、ショップ店員教育なども行っています。
近く、息子さんへ代を引き継ぐ予定であるとのこと。
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【Mt. Hood Roasters Coffee Company
http://www.mthoodroasters.com/
097-photo05.jpg ポートランドの開拓者Applegate一族の子孫である、Applegate夫妻が営むロースター兼カフェ。

Mt. Hoodの山裾にひっそりとたたずむこの焙煎店は、上述の2社とは異なり、週に2,000ポンド(約1トン)、年間でも85,000ポンド(約40トン)という規模のロースター。
地域のカフェ、ロッジ、ホテルに卸しています。

焙煎機は、コーヒーサイエンティストとして地元オレゴン州で名を馳せるMichael Sivetz氏が開発したという、オリジナルのエアーロースター。
一回に4~5kgしか焼けない年代物らしいです。

スペシャルティコーヒーを扱っていますが、そのコーヒーの良し悪しのみならず、Applegate一族の歴史背景、Mt. Hoodに居を構えるというロケーションも合間って、地域やここを訪れる観光客に着実に愛され続けるロースターという印象です。
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我々が訪問した際にエアーローストを実演してくれたのですが、小1時間程度の滞在の際にも何人ものお客さんがいらして束の間のコーヒーブレイクを楽しむ、とても暖かな雰囲気のお店でした。
エアーロースター実演の様子↓



【Stumptown Coffee Roasters
http://stumptowncoffee.com/
097-photo07.jpg 1999年創業の、ポートランドを代表するスペシャルティコーヒーを扱うロースター兼カフェ。
ポートランドに5店舗、シアトルに2店舗、ニューヨークに1店舗を構えています。

西部開拓時代、森林が生い茂っていた自然豊かなポートランドは、その森林を切り開いて道をつくるところから開拓が始まりました。当時は切った木の切り株(英語でstump)が街の至るところにあったことから、ポートランドはStump Town(切り株の街)の愛称を持っていたという逸話が残っており、これが店名の由来となったそうです。

コーヒー3rd waveの立役者とも言われるだけあり、創業のDivision店含め、ポートランド内にある各店の訪問時は地元客にSCAA参加者と思しきコーヒー関係者が混ざり、どこも店内はごった返していました。そのため、残念ながらポートランドのお店では店員と方とゆっくり話すタイミングがとれず、各店の店内をぐるりと回り、コーヒーを1~2杯飲むにとどまってしまいました。
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まず、創業のDivision店をご紹介します。
レジ奥のスペースにプロバットの機械を置き、誰もが目の前で焙煎の様子を見られるつくりとなっています。ここで焙煎したものはポートランド市内の自社店舗で提供されるのみならず、近隣のカフェ、レストラン、スーパーマーケットにも卸しています。

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097-photo11.jpg 続いてDowntown店。
市内中心部にあり、ポートランド市が指定する歴史的建造物の1階に入っていますが、場所はホテルやショッピングセンターが林立する市内中心部からはやや離れた若干寂しい通り。それでも毎日朝6時(土日は7時)からオープンしている店は、早い時間から大勢のお客さんがいました。

犬の散歩の帰りに寄ったり、朝ごはんを食べつつ読書したり、友人とのおしゃべりを楽しんだりと、地元客の日常生活にすっかり溶け込んでいる印象でした。

特筆すべきは、そのシングルオリジンの豆の種類。
各店ともChemexでいれるシングルカップ(といっても量は通常のドリップの2杯分ぐらいのボリューム)では、ペルーのCeco Vasa、ボリビアのFinca San Ignacio、エチオピアのYirgachefe、グァテマラのFinca El Injerto-Tangue、コロンビアのDecafe El Jordanといった銘柄がオススメ品として並んでいました。
こちらは1杯US$4.00~US$5.25といった価格帯です。
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それだけでなく、持ち帰り用のレギュラーコーヒーの銘柄も、頼めばChemexで淹れてくれます。
ちなみに、持ち帰り用のラインナップの価格帯は、12オンス(約340g)でUS$414.25~US$21.00と幅広く、銘柄もボリビアのBuenavista、コロンビアのLa Piramide、コスタリカのValle De Los Santos、ブルンジのKinyovu、ルワンダのHuye Mountain、インドネシアのGajah Ache、そして我がコーヒーネットワークでも扱っているエチオピアのMoredocofeなどが並んでいました。

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【Public Domain coffee】
http://www.publicdomaincoffee.com/
097-photo15.jpg 1972年に創業したオレゴン州の老舗ロースター・coffee bean INTERNATIONAL が2010年にオープンさせた、ポートランド・ダウンタウンにあるカフェ。

ここの店内も訪問時には朝からコーヒー関係者でいっぱいでした。

ハンドドリップコーヒーを実践販売のようにその場で見せながら提供。
エスプレッソバーもスタンドを低くしてバリスタの動きがつぶさに見て取れるようになっている"見せるショップ"でありました。

こちらのシングルオリジン系銘柄は3種類とかなり厳選された様子で、ルワンダのCOE受賞品、ペルーのSan Ignacio、タンザニアのPeaberryと、なかなか変わったラインナップでした。
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【Coava Coffee Roasters】
http://coavacoffee.com/
097-photo18.jpg ポートランドを南北に流れるWillamette Riverの東区にある倉庫街のような地域にあるお店です。

もともと木材作業場だったのをそのまま活かしてコーヒーショップとしていました。

店内には焙煎機と木材加工機械が無造作に置かれたままとなっており、その飾りっけの無さが返って格好いい雰囲気です。

ハンドドリップは金属フィルターを使用、蒸らす時間をとらず一度に2杯分のお湯を注ぎ、分量が出来たらカップに注ぎます。

同店のバリスタは、2012年バリスタチャンピオンシップにて4位に入賞しています。
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【Water Avenue Coffee】
http://www.wateravenuecoffee.com/

2010年に創業したこちらのカフェは、店内も非常にポップ。

他のお店は見るからにコーヒー関係者であふれていましたが、ここは地元のお客さんが多い雰囲気でした。

店の裏にはロースターが2台設置されており、オーナーらしき男性がカッピング用のカップを並べていました。いずれも壁一枚でお客さんからもすぐに見える場所にあります。
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【Dutch Bros. Coffee】
西海岸から中西部にかけてのいくつかの州に店舗を構える、ドライブスルー専門のコーヒーショップです。焙煎も自社で行っています。

駐車場の一角に1~2畳の小さい小屋が建っており、中には男女2名、24時間オープン(といっても実際はAM5-PM10:00だとか)。
片側はドライブスルー対応、片方は徒歩での客対応をします。
スターバックスにしろファーストフードにしろ、ドライブスルーが多く、米国らしい業態と言えます。

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097-photo24.jpg ちなみに、かのスターバックスにも、一切の座席のない、完全ドライブスルー対応の店舗が、ポートランド市内よりちょっと離れた場所にありました。

【Heart Coffee Roasters】
http://www.heartroasters.com/

097-photo26.jpg 2009年創業のこちらのお店は、Down Townから離れた瀟洒な住宅街に位置しています。こちらもコーヒー関係者であふれていました。

店内は配管をそのままに木目調で統一されています。

097-photo25.jpg店の真ん中には年代モノのプロバット焙煎機が置かれ、それを囲むように半円形に机と椅子が置かれていました。

ハンドドリップコーヒーは、こちらもChemexを使用していました。


◆ポートランドでの所感

『何故ポートランドのコーヒー文化は独自の発展を見せているのか?』という謎解きを、われわれは今回のミッションとしていましたが、複数のカフェ・焙煎業者を回る中で下記のように集約されるものと理解しました。

*人口60 万人という所謂「大都市」ではなく、かつカリフォルニア州の環境汚染に辟易したようなロハスな人々が移住してきて、こだわりの生活を営んでいる図式がある。

*地産地消が好き。(反ナショナルブランドであり、自家焙煎を応援している。)

*市民一人当たりのレストラン軒数が、全米一多い都市である。
*マイクロブリューワリー(地ビール醸造所)の数が、全米一多い都市である。
 →こうした背景があって、食文化へのこだわりが高い文化が醸成されていった。

*街全体の教育レベルが他都市と比べても高い 。
 →ファーストフードの普及する要素が少ない。

*ローカルの焙煎業者が高いレベルで競争しつつ、25年以上も前から消費者を啓蒙している。

実際に、ダウンタウンにあるスーパーマーケットのWhole Foods においても、コーヒー豆コーナーでは全国土の店舗にも置いているWhole Foods のPB品、指定焙煎業者であるAllegro Coffee(コロラド州)の商品に加えて、Stumptown、Back Pourch、Water Avenue やSeattle のCafe Vita など自家焙煎屋のコーヒー200g 程度のパッケージが10 種類ほど並んでいました。
全国規模のチェーンであっても、その都市で育まれるローカルブランドを欲しがる購買層がいることを物語っています。

在ポートランドのロースターを視察するにつけ目に留まったのは、"Keep Portland Weird"という気質です。Weirdとは俗語で"変わり者"という意味がありますが、つまり「ポートランドはちょっとおかしなままでいよう」というスローガンで表されるような気質なのです。

もともと人と違うことを奨励する文化があるこの土地にあって、いかに自分の焙煎は人と違うか、「全米の他の土地とは違うぜ!」ということをアピールする姿勢がことさらに強いと感じた次第です。

全国的にはマイナーなサイクロン型のジェットロースターが、この地域だけ異様に高い比率で普及しているのも、第2次大戦中にオレゴン州で起業したMike Sivetz 氏の焙煎機メーカーが自家焙煎向けの商品を世に送り続けている為です。焙煎機のような工業製品でも、地元産を買いたいという思想が徹底しているのだと感じました。

こういった様々な要素が組み合わさったことが、このポートランドで独自のカフェ文化が育まれていったのだと我々は今回の視察で実感しました。